202号室の、お兄さん☆【完】
「ひっ それは……」
「知ってたぁ? ドラガンさん、今はカチッと割るだけで、簡単にタレがかかるのよ」
「よ、……よるな」
「固形タイプのタレもあるらしくって、便利になったわよねぇ」
そう言って、笑顔で千景ちゃんは、納豆を混ぜだした。
ワザと音を立てる様に、ネチャネチャと。
「臭い臭い臭い臭い臭いくさーい!!! 日本の文化は美しいのに、何で腐ったもんば食べるね?」
「あら。あなたの国でも腐ったチーズ食べるでしょ?」
「寄るな、来るな、かき混ぜるな、近づけるなぁ~~!!」
半泣きの外人さんは、腰を抜かしたのか、座り込んだまま、後ろへじりじりと下がるしかできない。
「あらん? 私がかき混ぜた物が食べれないの?」
「『食べられないの』?だ! 『ら』抜き言葉を使うな、非国民め!」
文法を注意された千景ちゃんは、笑顔で納豆の剥がした蓋を、外人さんの顔に投げつけた。
外人さんの真っ白な肌が、みるみるうちに青ざめる。
「トイレは廊下の右側よ」
千景ちゃんが納豆を食べながら言うと、外人さんは急いでトイレに駆け込み、
リバースしたのでした。