202号室の、お兄さん☆【完】
「え?」
「反対から読んでも全く同じ! つまりこの文は回文なんでござる! 今日、銭湯友達のお爺さんに教えてもらって、目眩がするぐらい美しい日本語に酔いしれてしまい……」
「本当に酔っ払っらったのですね」
呆れたお兄さんに、ドラガンさんはムッとする。
「拙者は、お主には不満がありまする」
「は?」
「お主のせいで、この花忘荘の日本文化溢れる畳が取り払われ、フローリングになったんじゃぞ」
「――どういう事、ですか?
ここは僕が住む以前からフローリングでしたよ?」
本当に分からない、と首を傾げるお兄さんに、ドラガンさんはグッと言葉を飲み込んだ。
「畳も、お主には『悪い思い出』なんじゃな。――すまなんだ」
「いえ?」
お兄さんは不思議な顔をしながらも、笑っていました。
「どうだ? みかどさんと鳴海君、儂の部屋で一杯やり直さないかね?」
日本酒を手の甲でコツンと鳴らしながら、ドラガンさんは言った。
「「…………」」
私とお兄さんは、笑顔を崩さないまま、はっきり言いました。
「遠慮します」
と。