202号室の、お兄さん☆【完】
ドクンドクンドクンドクンドクンドクン

身体は冷えていくのに、鼓動は速く、胸を突き破るかのように動いていた。


「ど、……して」

タブーだ。
絶対に聞いてはいけない、
駄目だって、
止めろって、
全身が言ってるのに、




「ど、して、出られない……んです、か……?」



違和感を、壊したかった。

千景ちゃんや葉瀬川さんや、岳リンさんが匂わす違和感を。

なのに。





「それが、僕の戒めだから」



お兄さんは笑った。

違和感なく、笑ったんだ。


お兄さんにとって、土日部屋から出ないのは、
物音1つ立てないのは、


全く違和感のない、日常なんだ。



「私、……大丈夫です。
弟も、千景ちゃんもいるし」


私も、笑った。

違和感を感じさせないように、笑った。


すると、お兄さんは安心したのか肩の力を抜くのが分かった。


「お休みなさい。みかどちゃん」

手を振るお兄さんに、手を振り返す。

私の手は、情けなくも微かに震えていた。
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