202号室の、お兄さん☆【完】
千景さんは涼しい顔をして、鍵を開けると、その人は飛び込んで来た。
困ったような、泣き出しそうな赤い顔をした男の人が息を切らして怒鳴った。
「下着は外に干さないで下さいって何回お願いしたら分かるんですか!!!? 風の関係で、僕のところ……に」
紐パンを握って怒鳴るお兄さんと目があった。
「落ち……て……」
お兄さんはまばたきを2、3回すると、無言でドアを閉めた。
「ぷぷっ 面白いでしょ?」
千景さんは笑いを堪えたまま、ドアに向かって叫ぶ。
「鳴海さーん、私の紐パンツ返してーぇ!」
ドォンっと倒れる音がした。
外で、葛藤しているのか、なかなか賑やかな音がする。
皇汰が、ドアを開けると、顔をトマトの様に真っ赤に染めたお兄さんが、紐パンを握りしめて倒れていた。
「――パンツ、返せ。下着泥棒」
ヤンキー座りで屈み、お兄さんに右手を差し出した皇汰。
……あんたが欲しいだけなんじゃないの?と呆れてしまう。
「ち、違うんです!!! すみませんすみません」
お兄さんは両手で差し出し、皇汰はにんまり鼻の下を伸ばして、受け取った。