202号室の、お兄さん☆【完】

昨日、お兄さんの話を聞いたからか、千景ちゃんが『好きなの?』とか意地悪を言うからか、

――お兄さんの顔を見るのに、少し身構えてしまう。

顔に出したらいけないのに。

しかも、トールさんがお兄さんの彼女だと言った時、凄く胸が苦しかった。

上手く言えないけど、
きゅーっとして、ポワンと足元が浮かぶような。
チクチクして、フワフワするような。


大体、お兄さんが悪いんだ!
普段、おっとりしてるのに、店長してる時はイケメンさんになるから。


そうやって、色々考えながら歩いていたら、クスクスと笑っている声に気づいた。

トールさんが、席に両肘をつき、可愛らしく顎を置いて此方を見ていました。


「百面相、もう終わり?」


余りにも色っぽく笑うから、私は思わず赤面してしまいました。


「本っ当に、みかどちゃんは擦れてなくて可愛いね」
「そんなっ」

「俺ね、女の子って、息してるだけで、ううん、生まれてきただけでも可愛いと思うよ」

そう言って、水の入ったボトルを奪われ、トールさんは自分で優雅に水を注いだ。
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