最低で構わないから~好きと言えずに時間は流れる~
今にもカウンターを飛び越えて来そうな芽に、成美は渡された紙袋を押し付けた。

ワインレッドの紙袋。

何か、海藤さんらしくない色。



「――海藤さん!」



「何」



用件は本当に紙袋を持って来ただけの事らしく、帰ろうと店外に出た海藤さんを呼び止めた。

嫌そうに振り返り、こっちまでイラッとして、目を合わせて話すつもりになれず、「紙袋、誰に渡されたんですか」と訊ねながら、彼の後ろを行き交う車に目をやった。
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