現実を生きたからこそ、夢を見る
「落ることが悪かね」
「……」
「落ちてまた上る――動く足場に乗り直すことを何故考えない」
それが、一時の休息。現実を生きながらにしても、何ら障害(苦悩)もない自分だけの時間(足場)に立てばこれほど楽なことはないが。
「――気付いたよ。私にとっての足場が、“ここ”か」
意地の悪い奴だ。問いながらも、答えを知っているくせに。
「それもまた嬉しい言葉だが、前提が間違っていよう。“ここ”は、“夢”だ」
現実ではないと、強調された。
「君の居場所は、どこかね?」
「現実を生きろと言いたいのか」
「言わずとも生きていよう。懸命に、必死に。“生きる努力”を君はしている。されど、君の現実(足場)は障害にまみれている。見ている他人が心配するほどに、君は足場を変えずに、あまつさえ首を括って止まらない」