キミ、カミ、ヒコーキ
「おーいツバサぁ。飯食いに行こーぜー。俺のおごりでいーからさー」

ユージが校門前で、長い両腕をぶんぶん振り回している。俺はコーチとマネージャー君の間をするりと抜け、いそいそとユージに駆け寄った。


「あー助かったよサンキュー」

「へっ?」

 ユージは、汗で濡れた首をタオルで拭っている。

「お前はどう思う。パパまりもとオジジまりもはどっちが可愛いんだ?」

「ん? なんじゃそりゃ。‥‥よくわからんが響き的に、オジジまりもは胡散臭さいな」

ユージは頭を掻きながら半ば適当に受け答えた。そしてコーヒー牛乳をがぶ飲み。こいつと会うと八割方コーヒー牛乳を飲んでいる。

「ナルホド‥‥あっ!」

「ぶふっ! き、急になんだよぉ。ビックリすんじゃねぇか」

俺の突然の行動に、ユージは結構驚いたようだ。飲んでいたコーヒー牛乳を少しふいてしまったらしい。ジャージの袖で焦って口元を拭っている。

「あーチクショーすっかり忘れてた」

「何を?」

「三割の方の野郎」

ユージは、眉間にしわを寄せながら考えこんでいる。

「三割の野郎? 」



「ああ。今朝の遅刻の原因。すかしたもやし野郎だよ」
< 15 / 54 >

この作品をシェア

pagetop