キミ、カミ、ヒコーキ

☆6

【NOBUKO】

4階……3階……2階……階段をひとつ降りるたびに腹の奥がもやもやする。


濱村はいつもそうだ。嫌われ者のあたしに執拗に構う。人気者の濱村があたしなんかに。


バカにしているのか。

何かの賭け事か。


はたまた、ただの気ちがいか。


「っ畜生」

思いっきり壁を蹴る。つま先からビリビリする痛みが伝わる。いろんな苛立ちからしまいには涙が出そうになった。



ああ、二年前もそうだったんだ。あたしは、あいつに騙されたんだよ。


『親友』ってジャンルの仮面をかぶったあいつに。



もう繰り返さないって決めたんだ。誰とも関わらなければ何も無い。

無駄な指切りも

ゴミ箱行きの手紙も

プリクラも。


初恋のあの人も。

全部あいつが“笑う”為だけに作られた夢芝居の小道具。





友情?

絶対?

約束?





そんなのこの世にありはしない。


あるのは、裏切りと失望のマーブル。




そう、この世界はあの夕空みたいに澄み切っちゃいないんだ。
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