キミ、カミ、ヒコーキ
「畜生!」

あたしが今日8回目の“畜生キック”を出した時、勢いあまってローファーまですっ飛んでしまった。やばい。


ローファーは緩やかな放物線を描き、中庭の茂みの奥へ。


ゴツッ。



鈍い音がした。おそらくまともに着地はしていないだろう。まさか――


「うっ……うーん」


人間がいた。

しかも男だ。



……………最悪。




「あっ」

「うげっ」

逃げようとしたが、遅かった。目と目がガッチリ合ってしまった。


第一印象は×(バツ)。苦手なタイプだ。ひょろっとしてて白い。あれだあれ、食べ物で例えると――


「もやし」

「へっ?」

あたしが言おうとした言葉を男が先に答えた。

「君、今僕の事みて思ったでしょ。もやしみたいって」


男は不敵な笑みを浮かべている。なんであたしに関わってくる奴はみんな変人ばっかなんだ。

「……あんた何やってんだこんな所で」

「今朝も聞かれたよ。君と似た目をした少年に。まぁ飛んで来たのは靴じゃなくてたこ焼きだったけど」
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