キミ、カミ、ヒコーキ
「どうしたの? 顔熱いよ」
「なっ、なんでも……ないよ」
男は「そっかー」と一言もらすと、まだ何も書かれていない真っ白いページに鉛筆を走らせた。
柔らかくて優しい手。
あんなに冷たいのに温かく感じる。長くて華奢な指先。
そして、鉛筆が動き出してから一分もしないうちに、あたしは拍手をしてしまっていた。
あんな短い時間で、何も居なかったはずの紙の上を、一匹の小リスが駆け回っている。
「僕はね、動物を書くのが好きなんだ」
男は眠たそうな瞳を溶かせ、笑った。
「絵を描くのが好きなの?」
男はまた何も答えなかった。だけど一枚一枚丁寧にめくるそのスケッチブックを、そのいのち達を見ていたら言わずとも分かってしまった。
空はだいぶ陽が沈み、ミカン色の空は淡い藍色に変わっていた。大きなスケッチブックをカバンにしまいながら、男があたしに声をかけた。
「なっ、なんでも……ないよ」
男は「そっかー」と一言もらすと、まだ何も書かれていない真っ白いページに鉛筆を走らせた。
柔らかくて優しい手。
あんなに冷たいのに温かく感じる。長くて華奢な指先。
そして、鉛筆が動き出してから一分もしないうちに、あたしは拍手をしてしまっていた。
あんな短い時間で、何も居なかったはずの紙の上を、一匹の小リスが駆け回っている。
「僕はね、動物を書くのが好きなんだ」
男は眠たそうな瞳を溶かせ、笑った。
「絵を描くのが好きなの?」
男はまた何も答えなかった。だけど一枚一枚丁寧にめくるそのスケッチブックを、そのいのち達を見ていたら言わずとも分かってしまった。
空はだいぶ陽が沈み、ミカン色の空は淡い藍色に変わっていた。大きなスケッチブックをカバンにしまいながら、男があたしに声をかけた。