キミ、カミ、ヒコーキ
「田畑先生。それは困りますなあ。こんなんでもこいつ、期待のエースなもんで」
「磯川コーチ!」
磯川先生。陸上部のコーチ。まだ26で若い癖にどこかオヤジ臭い。だけどカッコイいんだ!
誰に対しても平等で気さくで大らかで。
俺が持っていないものをたくさんこの人は持っている。
この退屈な世の中で唯一尊敬する人。
磯川コーチ。
青いジャージの隙間から、小麦色に焼けた肌が見える。顔を見ずとも、それだけで磯川コーチだと分かってしまう。
振り上げそうになった俺の右腕を掴み、ゆっくりと降ろす。そして、田畑に微笑みかけ軽く会釈をした。
田畑は分が悪そうに咳払いをし、変に小綺麗な自分の席へ戻った。そして俺に嫌みったらしく言った。
「チッ、野口明日は遅刻すんなよ」
「先生明日は学校ありませ――痛っ!!」
田畑の墓穴を掘ろうとした俺の口より先に、コーチのでこぴんが飛んできた。
「お前も調子に乗るな。外周10周増やすぞ」
「へへっ、20周でもいけますよ」
俺は職員室のど真ん中で、高々とブイサインを決めた。その二秒後、本日二回目のでこぴんが容赦なく飛んでくるとも知らずに。
「磯川コーチ!」
磯川先生。陸上部のコーチ。まだ26で若い癖にどこかオヤジ臭い。だけどカッコイいんだ!
誰に対しても平等で気さくで大らかで。
俺が持っていないものをたくさんこの人は持っている。
この退屈な世の中で唯一尊敬する人。
磯川コーチ。
青いジャージの隙間から、小麦色に焼けた肌が見える。顔を見ずとも、それだけで磯川コーチだと分かってしまう。
振り上げそうになった俺の右腕を掴み、ゆっくりと降ろす。そして、田畑に微笑みかけ軽く会釈をした。
田畑は分が悪そうに咳払いをし、変に小綺麗な自分の席へ戻った。そして俺に嫌みったらしく言った。
「チッ、野口明日は遅刻すんなよ」
「先生明日は学校ありませ――痛っ!!」
田畑の墓穴を掘ろうとした俺の口より先に、コーチのでこぴんが飛んできた。
「お前も調子に乗るな。外周10周増やすぞ」
「へへっ、20周でもいけますよ」
俺は職員室のど真ん中で、高々とブイサインを決めた。その二秒後、本日二回目のでこぴんが容赦なく飛んでくるとも知らずに。