キミ、カミ、ヒコーキ
「君は?」

「えっ?」

「君は絵を描いたりするのかい?」

「あたしはなーんも描かない……いや描けないよ。ヘタクソだし」

「あー、そんな気がします」

「なっ! てめぇ」

あたしがローファーを脱ぎ、「もっかい頭、やってやろうか」と言うと、男は降参の白旗変わりにプリント用紙をふらふら振り回していた。


「いつも絵、書いてるの?」

あたしが尋ねると今度はすぐに答えてくれた。

「うん。朝と昼休みと放課後。学校ある日は毎日描いてる」


「それ以外は描かないの?」


「んー、まぁね」

男はそれだけ言うと、また口を閉じてため息をひとつ空へもらした。


「変な奴」


男がバスの停留所へ足をとめた。あたしんちは高校から徒歩5分のおんぼろアパート。だからここでお別れという事になる。


「じゃああたし、こっちだから」

「送ろっか?」

「ふんっ、大丈夫だよ。ローファーあるし」

「ローファー無くても大丈夫だと思います」

「あん?」

男は笑いながら「冗談、冗談」と手を振った。
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