キミ、カミ、ヒコーキ
俺とユージはたこ焼きを食べ終えると、そのまま別れた。結局愚痴話は線香花火のようにすぐに落ち、話のほとんどが田畑の蛙顔についてと、明日の練習内容についてだった。



「そんじゃあ明日、8時半に東門前なあ。遅刻すんじゃねーぞ」

「ういーす」


ユージに軽く手を振ると、俺は普段あまり触らない携帯をのぞいた。待ち受け画面には初めて出場した記録会のグラウンドと、右上にちょこんと申し訳なさそうに『19:20』と時刻が表示されていた。辺りはすっかり真っ暗になっていて、どこからともなく焼き魚の匂いや、家族団欒の声が俺の背中をつっついた。


あんなにたこ焼きを食ったのに、もうお腹は第2ラウンドの下準備を始めようとしている。


「あー、もうちょい食っておけば良かったかなあ」


俺が腹をさすりながらとぼとぼ歩いていると、向こう側から見慣れた車が出てくるのが見えた。
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