キミ、カミ、ヒコーキ
二年前の夏。中学三年生のせわしない時期に、大好きだったお父さんは死んだ。


しがない普通のサラリーマン。酒もタバコもやらない。いつも夜の7時には家にいてくれて、あたしに数学を教えてくれた。


そう、絵に書いたようないい父親だった。


いつも笑っていて、でもきっとあの時からお父さんの体を“黒い悪魔”が蝕んでいたんだ。


あっけなかった。


あたしが学校から帰ってくると、おばあちゃんが電話の前で泣き崩れていて。“あいつ”は台所で一升瓶を抱え酔いつぶれていた。



『あたしね、別に愛してなかったのよ。あの人の事なんて』


骨だけになったお父さんの前で、“あいつ”はずっとぼやいていた。


そこに何かがあるようにただ一点を見つめて。


あたしにはそれが、子供の強がりにしか見えなくて仕様がなかった。
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