キミ、カミ、ヒコーキ
二年前の夏。嫌な暑さだった。今でも覚えてる。


わんわん泣き喚くセミ。

したたる汗。


濁った太陽の光。


その日から“あいつ”は、酒と男に溺れては振り回される生活を繰り返していた。あれから殆ど顔を見ていない。いや見ようとしていないんだ、お互いに。

ただ、おばあちゃんだけが“あいつ”の帰りを待っていた。“あいつ”の大好きな林檎をむいて。





紛れもない。


あいつ……石崎裕子はあたしがこの世で一番嫌いな奴。




あたしのたった一人のお母さん。

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