キミ、カミ、ヒコーキ
遠くから聴こえる吹奏楽部のらっぱの音以外何もない。


サッカー部は練習試合だし、野球部は市営グラウンドを借りて練習。


今日はこの校庭を思いっきり走れる!


わくわくする。かたっくるしい教室にも、ギスギスした家にもない、ここにしかない感覚。


広い校庭に広い空。


「ここが俺の居場所……」

「ん? 翼、何か言ったか?」


「いや」


「おう。ならいいけどよ。あっ、そうだ、今日の昼飯な、俺弁当持ってきたんだ」


ユージはわざとらしくウィンクをしながら、紙袋を指差した。

「げっ、ユージの手作りなら俺遠慮しますけど」

「ばーか。んなわけねえだろ。アイちゃんが作ってきてくれたんだよ。俺と翼の分」

「へー。すげえな。奥さんみたい」


そう言うと、ユージは顔を赤らめて、勝手に一人盛り上がっていた。


俺は先にウォーミングアップの800Mを開始した。

我に帰ったユージも、すぐに俺の後を追う。


「なぁなぁ」

「あっ?」

「翼はなんで彼女とか作らねえんだ」

「興味ないから。めんどくせーし。つーか走ってる時くらい口閉じてろや」

「んもう。照れちゃってー。きゃーわーいーいー!!」

「うわっ、きめー」

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