キミ、カミ、ヒコーキ
『旧美術室』

そうかかれた古い扉を、力なく押しあけた。

雨が降ってたり、屋上まで行くのが気だるい時なんかは決まっていつもここに来る。

去年、新しい美術室が中央校舎に出来てから、ここは使われなくなった。この中は少しほこりっぽいけど、古い絵の具や木の匂いがあたしを包み込んでくれる。校庭側には大きな窓があって不格好なカーテンがそいつに優しく寄り添っている。

あたしはカーテンにくるまるように窓の脇に座った。

嫌なことがあると、全てこの窓が吸い込んでくれるんだ。でも、夜になると帰ってくる。

闇の中、あたしに降りかかる。

吸ってはくれるけど、消してはくれない。そんな都合のいいアイテムなんか、存在しない。


もし仮にあるのならば真っ先にあたしは、“二年前”を消去してもらうだろう。あの日から変わっていった。あたしの中にあった沢山の言葉達は根本から崩されて、粉々になって、今のあたしを作った。

汚い色のセメントで塗り固められた“石崎信子”が。

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