キミ、カミ、ヒコーキ

★3

【TUBASA】

「っしゃぁぁぁ!」


三歩先でゴールテープを切るユージの背中が見えた。両手で高くガッツポーズを決め、振り向き、真っ白な歯を俺に見せ笑った。


「まじかよー。だって女子校舎の方でさー、誰かが急に……」

「はいはいはい言い訳はナシだぜ。あー来週何食おうかなーん。カツ丼に天丼に親子丼に――」

「バカ、丼物ばっかじゃねえか。BランチでいいだろBランチで」


「てーんどーんてんどーんどどどんどーん」


ユージは自作の「天丼の歌」を陽気に歌いながら、コーチとマネージャーのいる校庭脇へ走った。


俺は女子校舎の屋上をもう一度見返した。誰もいない。今確かに誰かが叫んだんだ。内容はよくわからないが、あれが女だっていうことは確実だ。


この学校は一応は共学らしいが、校舎は男女に別れている。このバカでかい校庭を挟んで向こう側が女子校舎、別名『花園』。そんでこっち側が男子校舎、別名『魔窟』。


勿論、男子は花園には入れないし、女子も魔窟へは入れない(というか誰も入りたがらない)。
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