キミ、カミ、ヒコーキ
過去に何人か、花園に入ろうとした男子がいたが、結局先生にバレてこっぴどく叱られたらしい。中には、一週間の謹慎処分をくらった奴もいる。


そんな哀れな男子にも年に何回か、チャンスは巡ってくる。体育祭に文化祭に球技大会。あとは、俺の嫌いな音楽祭。

こういったイベントは、なぜか男女合同で行う。しかし、理不尽な校長が決めた『校内恋愛禁止』という校則のせいで、なかなか恋愛には発展しずらいらしい。ユージにも彼女はいるらしいが、他校だと聞いた。

そりゃそうだ。こんな固っ苦しい所で愛だの恋だの言ってられるわけがない。




まあしかし俺には関係ない事だ。

俺は走ることさえできれば、それでいいんだ。他のことに興味関心なんて、無い。


たださっきの声だけは違った。耳を通って頭の中を通って心臓を通ったその時、


ドクン



と鈍い音を鳴らした。





それが人生初めての『恋』の始まりだったなんて、この時の俺は微塵も気付いちゃいなかった。
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