ありがとうのその前に




いつもの昼休み



『琴音…』




違うのは笑顔のない翔吾。




『昨日ごめん…』


『…真由美先生どうだったの?』


『うん…ちょっと不安定だっただけだから…』


『そう…』




何があったの?なんで翔吾が行かなきゃならなかったの?



真由美先生のこと好きなの?




聞きたいことはたくさんあった。でも聞けなかった




きっと翔吾は悲しそうな顔をする…自分を責める




もう自分を責めて欲しくなかった。初めてキスした日のように…




『誕生日…やり取そうか』




翔吾はあたしの顔色を伺いながら言った



あたしの望んでいた言葉をくれた。



でも



『もう遅いよ…』



あたしは言葉を搾り出した



『え?』



翔吾の辛そうな顔を見たくなくて目をそらしてしまった








あたしは…嘘をついた



辛い辛い嘘




でも今のあたしにはこうするしかなかった



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