ありがとうのその前に



『翔吾といると疲れるの』


『…琴音?嘘つかないで…俺のこと考えてくれてんだろ?』




ほら、バレちゃう…やっぱり翔吾はあたしのことちゃんと見てくれてる




不謹慎だけど嬉しかった



でも





あたしは嘘をついた



ついてはいけない嘘を




『翔吾のこともう好きじゃないんだ?ごめんね』




あたしは溢れ出しそうな涙を堪えて翔吾に背を向けた




翔吾の反応がなくてチラッと後ろを振り向くと翔吾は力なく床に座りこんでいた





『ごめん…琴音…でも俺…お前がいないと嫌だ…必要なんだ』



あたしにとってこれ以上の言葉はないってくらい嬉しかった




ほんとは今すぐ翔吾に抱き着きたい


うそだよッて言いたい




でも翔吾の夢に今のあたしはいらないよね




きっといつか翔吾が真由美先生のことを気にしても平気でいられるくらい強くなれたら













また












彼女にしてくれますか?









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