ありがとうのその前に


あたしたちは付き合ってた頃のように別れた


『じゃあまたなッ』



翔吾のこの言葉を聞いたのは何ヶ月前だろう



ヒロも久しぶりに3人で帰ったことに大喜びだったな




あたしも、あの頃に戻れたんじゃないかって嬉しくなった





でも現実は『またな』の―また―はいつだろう?




明日じゃないんだよね…






少し落胆気味に家のドアを開けた



すると玄関には見覚えのある靴がある





『お母さん…』


『おかえり。遅かったのね』




母はまた着替えを取りに来ただけらしい




今までなら黙って見送ってた




けど今日は違う





さっき聞いた翔吾の言葉が頭をよぎった





―お母さんもきっと甘えてくれるの待ってる―


―真剣な気持ちを無視したりしない―




あたしはお母さんの前にプリントを差し出した




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