ありがとうのその前に




『…昨日なんかゴメンな?』



ドクン




ゴメン?なにが?




『それは何に対してのゴメン?』


『えッ?』



『なんで謝るの?なにも悪いことしてないじゃん』




そう、翔吾はただ彼女と歩いてただけ。あたしが勝手に見て傷ついただけ




『それは…』




その先は聞きたくなかった





きっと気持ちに答えられなくてゴメンの「ゴメン」だよね?





辛いな…





あたしはグルグルする頭の中にある考えを思いついていた






あまりにも馬鹿な考え







―あたしが翔吾を嫌いになれないなら、あたしが翔吾に嫌われればいいんだ―







馬鹿な考えだけど、この時のあたしにはこうするしか道はないと思った






『てかなんで来たの?』


『ヒロから…琴音が熱出したって聞いたからヒロを送って、様子を見ようと思って…』


『翔吾には関係ないじゃん』






早く怒って…そしてあたしを嫌いになって…



そして二度とあたしの顔なんか見たくないって思って…





ほんとは翔吾にこんなこと言いたくないんだよ…




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