ありがとうのその前に



ドア一枚を隔てて会話しているあたし達




『琴音はもう俺のこと嫌い?』




その言葉を聞いてあたしは溢れ出す涙を止めることができなかった



嫌いなわけない…大好きだよ…世界一大好きなんだよ?




声を発すると泣いているのがバレてしまいそうだったので返事はできずにいた




もし話せるならあたしは言っていたからもしれない



『嫌いじゃない。大好きだよ』


って。





『俺そんな嫌われてたんだな…ゴメンな今まで…ゴメン…』



そう言うと階段を下りていく足音が聞こえた





急に足の力が抜けて地面に座りこんだあたしは…泣いた





涙って枯れないんだってまた思ったんだ…あれ以来だね。




翔吾とさよならしたあの日以来。






ごめんね翔吾




傷つけてごめん






でもこうするしかできなかった…




あたしは本当に弱い人間だ




翔吾の声、振るえてた




あたしのせいで泣かないで?苦しまないで?




嫌いになって…



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