ありがとうのその前に



『1年前、真由美から電話がかかってきたの覚えてる?』




当たり前だよ…あれであたしたちは壊れたんだから




あたしは黙って頷いた





『先輩が事故にあったって連絡だった』


『え…?』


『最初は「今から来て」って言うから断ってたんだけど…なんか先輩がバイクで転んだらしく病院に運ばれたって聞いて…』




そうだったんだ…先輩に会いにいったんだね




『すぐ琴音に連絡しようとした…でもできなかった』


『どう…して?』


『俺は琴音を傷つけた。突然のことで気が動転してたとしても大切な日に置いていくなんて…でももしかしたら許してくれるかもしれないって思って次の日呼び出したら…嫌いって言われた。当たり前だよな…』




だんだん声が奮えていくのがわかった





『でもきっと琴音は俺のことを考えてそう言ったんだってわかったから…いつか琴音が戻ってきてくれるの待ってた…情けないけどな…』





あたしが翔吾の夢のために身を引いたのも



強くなったらまた彼女になりたいって思ってたことも



ちゃんと伝わってたんだ




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