ありがとうのその前に



『ほい。』





カタン





小さな机に置かれた料理からは白い湯気と美味しそうな香りがしている





『いただきます…』





パクッ




あたしは一口食べると涙が溢れてきた





『琴音ッ?!』






すごく優しい味がする





『翔吾…ゴメンね…翔吾はこんなにあたしのこと想ってくれてるのに…』





一口食べただけで翔吾の愛情が一気に伝わってきたんだ





これが「人を幸せにする料理」なんだってわかった






『琴音の作ってくれる料理も…愛情がいっぱい伝わってくる。幸せの味なんだぞ?』




翔吾はあたしの頭を優しく撫でた




『俺はこんな幸せな味の料理を毎日食えるようになるんだなっていつも思って食ってたよ』



『ほんと…?幸せにできてる?』





翔吾はあたしの涙を拭いながら頷いた






『あたしの夢…叶うかな…?翔吾だけじゃなくてみんなを幸せにできるかな?』



『言ったろ?「叶うかな?」じゃなくて、叶えるんだ。叶えるために生まれてきたんだから』





あたしは翔吾と出会ってから翔吾の言葉で何度助けられただろう



翔吾の言葉を聞いていると自然と不安はなくなってる自分がいる


翔吾がいなければ今のあたしはいなかったよね





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