ありがとうのその前に
それが日常


それが人生



あたしには十分だ。



『ただいま~』



2年3組の教室のドアを開けると汗くさい匂いがする


『おかえり~!怒られた?』


ニヤニヤしながら話かけてきたのは親友の結衣



『怒られた怒られた。まぢ話長かったから…』


うんざりした顔をすると、そこに修平が近付いてきた


結衣と修平とは中学の時からの腐れ縁で常に3人で行動している


一番あたしのことを知っている2人だ



『コバヤンに呼び出されたんだろ?』



コバヤンとはさっきのオッサン。うちの担任だ。


『そぅそぅ…将来の夢とか言い出してさぁ…』


『またか?!』


うちのクラスはみんなこの話は耳にタコってくらい聞かされている



『夢ねぇ…』


結衣が窓の外を見ながら呟いた


『どしたの?』

いつもと違う反応の結衣に驚いて聞き返した


『ん~恋がしたい!』








夢ぢゃねぇし!!!



『恋はタイミングだからな!』


修平…すごい食いつきだ…



恋ねぇ…



『やっぱ高校時代に彼氏は作るべきだよね♪』


結衣の目が少女漫画みたいに輝いている


テキトーに返事をして窓の方を見ると、外はもう夕焼けでほんのりオレンジ色になっていた


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