ありがとうのその前に

お昼近くになると外はますます陽射しが強い


あたしたちは水族館横の海の見えるテラスのようなところでお弁当にすることにした



周りには同じように家族連れがお弁当を食べている


『さぁ~ヒロ!お弁当にしよ♪…ヒロ?』



ヒロは無言で隣りの家族連れを見つめていた



お母さん
お父さん
男の子が1人
ヒロと同じ歳くらいだろうか


『ママ~からあげ食べたい~』

『もうこの子は仕方ないわねぇ~ほらア~ン♪』


『おいし♪』


『優くん!パパにもくれよ~』

『いいよ♪パパ!ア~ンしてぇ』



そんな普通の家族の風景



でもヒロはそんな普通の家族の風景さえ経験したことがない



まだ小さいヒロは何を思ってるんだろう



ヒロはずっと無言で見つめていた



翔吾もあたしと同じようなことを思ったのだろう



ただあたしたちは茫然とヒロを見つめていた



あたしはどう頑張ってもヒロの母親にはなれない


ヒロの想いを受け止めてはあげれないんだ…


辛かった


同時に母親が憎くなった


あたしは、ただただ唇を噛み締めるしかなかった


ごめんねヒロ…


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