ありがとうのその前に


だって夢なんていらないんだもん
辛いだけなんだよ


でも夢を持ってる翔吾が聞いたら怒るかな?怒るよね



でもね



あたしはこう育っちゃったんだ


翔吾に嫌われるかもしれないね


それも辛いや…




涙が溢れ出して止まらない


ポン


翔吾が頭を撫でてくれた
そして優しく抱きしめてくれた

『琴音。どうした?話してごらん?』

『やだよ~!翔吾に…嫌われたくない…やだ…』

『嫌いになるわけないだろ!なにがあっても好きだよ。琴音の気持ち全部教えて?』



神様


初めて人に心の内を話します
しかも大好きな人に

大丈夫かな?信じていいですか…


『いいよ』って聞こえた気がした

今思うと思い込みかもしれないけど…聞こえた気がしたんだ



『あたしね…夢は…ない…いらないの…』

『うん…どうして?』


翔吾は優しく答えてくれた

怒ってない


『お母さんね…昔から医者になりたかったんだって…夢だったって』

『うん』

『でもね…ずっといないの…あたしはいつも家に1人で…小学生の時から参観日にも運動会にも来てくれたことなかった』


涙と言葉がどんどん溢れてくる


< 37 / 219 >

この作品をシェア

pagetop