ありがとうのその前に
だって夢なんていらないんだもん
辛いだけなんだよ
でも夢を持ってる翔吾が聞いたら怒るかな?怒るよね
でもね
あたしはこう育っちゃったんだ
翔吾に嫌われるかもしれないね
それも辛いや…
涙が溢れ出して止まらない
ポン
翔吾が頭を撫でてくれた
そして優しく抱きしめてくれた
『琴音。どうした?話してごらん?』
『やだよ~!翔吾に…嫌われたくない…やだ…』
『嫌いになるわけないだろ!なにがあっても好きだよ。琴音の気持ち全部教えて?』
神様
初めて人に心の内を話します
しかも大好きな人に
大丈夫かな?信じていいですか…
『いいよ』って聞こえた気がした
今思うと思い込みかもしれないけど…聞こえた気がしたんだ
『あたしね…夢は…ない…いらないの…』
『うん…どうして?』
翔吾は優しく答えてくれた
怒ってない
『お母さんね…昔から医者になりたかったんだって…夢だったって』
『うん』
『でもね…ずっといないの…あたしはいつも家に1人で…小学生の時から参観日にも運動会にも来てくれたことなかった』
涙と言葉がどんどん溢れてくる