ありがとうのその前に


『ヒロが生まれてからだって同じでヒロにも寂しい思いさせて…辛かった』


紅茶はもう冷え切っていた

でも翔吾の腕の中は暖かい


『あたし頑張ってヒロに寂しい思いさせないようにしてたけど…頑張ったって母親にはなれないの…』


あたしたち何か悪いことしたのかな?



なんでいつも寂しいのかな?





心にぽっかり穴が開いてるみたいだった



暗い暗い穴




『医者は夢かもしれない。でもその夢が叶ったことで…あたしは辛い思いをしてる…ヒロだって…!』




一方の夢が叶ったことで他の人が辛いなら叶わない方がいい


でも叶わないのも辛いから…ならいっそのこと夢なんて持たない方がいいんだ




あたしは幼心にそう決めたの






心の内の全てを翔吾に話した。



翔吾の心臓の音が心地よくて、あたしは少し落ち着きを取り戻していた



< 38 / 219 >

この作品をシェア

pagetop