ありがとうのその前に
『ヒロが生まれてからだって同じでヒロにも寂しい思いさせて…辛かった』
紅茶はもう冷え切っていた
でも翔吾の腕の中は暖かい
『あたし頑張ってヒロに寂しい思いさせないようにしてたけど…頑張ったって母親にはなれないの…』
あたしたち何か悪いことしたのかな?
なんでいつも寂しいのかな?
心にぽっかり穴が開いてるみたいだった
暗い暗い穴
『医者は夢かもしれない。でもその夢が叶ったことで…あたしは辛い思いをしてる…ヒロだって…!』
一方の夢が叶ったことで他の人が辛いなら叶わない方がいい
でも叶わないのも辛いから…ならいっそのこと夢なんて持たない方がいいんだ
あたしは幼心にそう決めたの
心の内の全てを翔吾に話した。
翔吾の心臓の音が心地よくて、あたしは少し落ち着きを取り戻していた