ありがとうのその前に
ゆっくりと離した唇
『琴音…』
翔吾が何かを言おうとしたその時だった
~♪~♪~♪
翔吾の携帯が鳴った
『あッごめん…』
『いいよ♪出なよ』
翔吾が携帯をポケットから取り出して通話ボタンを押した
『もしもし?……真由美?!』
―真由美―
なんでこんな時に真由美先生から電話が…?
嫌な予感がした―
『ちょッ…!真由美?無理だよ…』
電話から微かに声がしている
翔吾はすごく辛そうな顔になっていた
それからしばらくして電話を切った
『…ごめん琴音!俺行かなきゃ!』
『翔吾?なんで…?真由美先生のところ?真由美先生のこと好きじゃないんでしょ?!』
『…ッ…ごめん…』
そのまま翔吾は何も言わず走って行ってしまった
あたしを置いて
あたしは電話を切る直前、聞いてはいけない言葉を聞いてしまった
聞こえてしまった
微かに聞こえた震えた声
―助けて、会いたい―
あたしから翔吾を奪っていった言葉