ありがとうのその前に
空を見上げると白い粉雪がふわふわと降ってきていた
―誕生日に雪とかよくねぇ?―
―最高だね―
こんなやり取りをしたのは、ついさっきなのに何年も前な気がした
『全然最高じゃないよ…翔吾がいないと…全然キレイじゃない…嬉しくないよ…』
さっき温かかった繋がれた手も唇も…今はもう
冷え切っていた
ただ温かいのは
あたしの瞳から流れる無数の涙の粒だけ
その日、あたしの幸せは一本の電話で消えてなくなった
人生で1番幸せな誕生日だったのにな…
人生で1番辛い誕生日になっちゃった