Lost voice Ⅱ‐キミ ノ オト‐
Another score‐未来のシンフォニー‐
…ザァザァと、音を奏でるように。
鉛色の空から、たくさんの小さな雫がこぼれ落ちてきていた。
さっきまでとてもいいお天気だったのに、と傘を持たない両手に目をやり、小さくため息をつく。
雫はアスファルトを濡らし、水たまりにはいくつもの波紋が浮かんでは消え、浮かんでは消え。
ぼんやりとそれを眺めながら、雨の向こうからやってくるはずの、彼を待っていた。
昔から、雨は冷たくて悲しい印象があるけれど、私はそんなに雨が嫌いではなかったりする。
晴れの顔、
曇りの顔、
雨の顔、
雪の顔。
空は私たちと同じように、表情を変える。
私たちだって笑うし、泣きたい時や怒りたい時、へこむ時だってある。
空もまた、同じなのだと。
昔に読んだ、何かの本に書いてあったなと記憶を巡らせる。
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