Lost voice Ⅱ‐キミ ノ オト‐
彼の瞳については、ヴァイオレットは非常に珍しい色であり、それゆえに幼い頃はかなり辛い思いをしたという。
だが、今は色を隠していない。
今はヴァイオレットのカラコンもあるし、さほど気にする人もいないそうだ。
私は、彼の瞳がキレイだと思うし、ありのままでいてくれることを嬉しくも思う。
そして、彼は私に夢をもう一度見させてくれた、恩人でもある。
かつて大切な親友を亡くし、罪の意識から私は失声症を患い、声を無くした。
二度と歌わない、と夢を諦めていた私を、彼は救ってくれた。
そして、過去のしがらみを解いてくれた。
私は彼に感謝しているし、二度と夢を諦めないと誓った。
…天国にいる、大切な親友、アキちゃんと約束したのだ。
たくさん辛いこと悲しいこともあったけれど、今私はrainのボーカリストとして、楽しい日々を過ごしている。
「さて、次は講義だろ。二人とも、行くぞ」
愁生さんが腰をあげると、優兄と暁くんも立ち上がった。
「あ…」
もう行っちゃうのかぁ…。
大学が終わってからまた会えると言うのに、別れ際はいつも寂しい。
そんな私の視線に気付いたのか、暁くんはフッと柔らかく微笑んだ。
「…柚、またあとでね」
「うん、またね。」
私の額にキスをすると、ちょっと名残惜しそうにしながらも離れ、テラスをあとにした。