Lost voice Ⅱ‐キミ ノ オト‐
「…そ、そうですけど」
「やっぱり~!たまにさー、見かけてて。可愛いなぁって思ってたんだよねぇ~?」
「ホントだ可愛い~」
ニヤニヤと、全員の視線が優輝にと不躾に向けられていた。
ただ1人、金髪の人を除いて。
彼は先ほど、避妊がどうの言っていた人だ。
確か、龍…と呼ばれていた。
何故か彼だけは、真顔で私を見ている…と言うより睨み付けているに近い。
「ねー、連絡先教えて?」
ハッと我に返ると、優輝が青い顔をして怯えていて、けれど怖い数人に囲まれていて逃げ出せない状況だった。
優輝のアドなんて教えたら、さっきの会話からして、確実にろくな目にはあわない。
絶対にそれだけは避けなきゃいけない。
そう思ったら、頭の芯がスゥと冷えた。
「すみませんけど、私たち用があるので。失礼します」
囲まれる優輝の手を引き、無理やり連れ出す。
「えー、ちょっとくらいいいだろ?キミ関係ないしさー」
私への明らかな不満と敵意に、少し怯みそうになるが、優輝を守らなければという気持ちがすぐに勝つ。
「あります、友達ですから!」
「柚…っ」
今にも泣き出しそうな優輝の手をきつくぎゅっと握る。
私も泣きそうだったけど必死にこらえた。
声が震えそうになるのも耐えた。
だって一番怖いのは優輝だ。