Lost voice Ⅱ‐キミ ノ オト‐
なんとか振り切ってテラスを出ると、さすがに追いかけては来なかった。
ホッと息をつき、きつく握った優輝の手をそっと離す。
怖かった、ものすごく怖かった。
「柚…。」
優輝が今にも泣き出しそうな顔をしたので、あわてて人気のないところへ行く。
「怖かった…。ごめん柚…、ありがとー…っ」
「ううん、大丈夫。優輝に何もなくて良かった…」
「うぅっ、柚~…っ」
泣き出した優輝を抱き締めると、優輝が震えていることがわかる。
実は優輝は、一応彼氏はいるが、男の人が苦手だ。
普通に話す分には問題ないが、ああいうのはさすがに怯える。
私だって怖いのだから、当然だ。
美人なだけあり、今までにもこういうことがあったのだろう。
背中をさすると、優輝の体の震えも次第に落ち着いて行く。
「ほんと、ごめん。情けない。」
「仕方ないよ、あれは怖くて当然だし…」
優輝には、こんなことじゃ返しきれないほどのことをしてもらった。
私がまだ声を無くしているとき、友達として側にいてくれた。
私が泣いているとき、黙って寄り添い抱き締めてくれた。
私が声を取り戻した時は、誰よりも喜び、涙すら流してくれた。
今だって、私の一番のファンだと言ってくれている。
いつも笑顔で明るい優輝に、どれほど助けられたか。
計り知れないほどのものを優輝にもらった。
だから、私は。