Lost voice Ⅱ‐キミ ノ オト‐





なんとか振り切ってテラスを出ると、さすがに追いかけては来なかった。





ホッと息をつき、きつく握った優輝の手をそっと離す。





怖かった、ものすごく怖かった。





「柚…。」




優輝が今にも泣き出しそうな顔をしたので、あわてて人気のないところへ行く。





「怖かった…。ごめん柚…、ありがとー…っ」




「ううん、大丈夫。優輝に何もなくて良かった…」





「うぅっ、柚~…っ」





泣き出した優輝を抱き締めると、優輝が震えていることがわかる。




実は優輝は、一応彼氏はいるが、男の人が苦手だ。




普通に話す分には問題ないが、ああいうのはさすがに怯える。





私だって怖いのだから、当然だ。






美人なだけあり、今までにもこういうことがあったのだろう。





背中をさすると、優輝の体の震えも次第に落ち着いて行く。





「ほんと、ごめん。情けない。」





「仕方ないよ、あれは怖くて当然だし…」





優輝には、こんなことじゃ返しきれないほどのことをしてもらった。





私がまだ声を無くしているとき、友達として側にいてくれた。





私が泣いているとき、黙って寄り添い抱き締めてくれた。




私が声を取り戻した時は、誰よりも喜び、涙すら流してくれた。





今だって、私の一番のファンだと言ってくれている。





いつも笑顔で明るい優輝に、どれほど助けられたか。





計り知れないほどのものを優輝にもらった。





だから、私は。






< 14 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop