Lost voice Ⅱ‐キミ ノ オト‐
複雑そうに優輝が顔をしかめたのを見て、思わず吹き出す。
「とっ、とにかく!気を付けてね」
「ん、わかった…。ありがとう」
この時私は、優輝の言ったことを本当に理解はしていなかった。
それを知るのは、これの少しあとになる。
*************
いつものように、大学が終わったあと、Rainのメンバーはライブハウス“リコール”へと集まる。
これはずっと続く習慣で、自然と全員が集まるのだ。
このライブハウスは、李織さんの親戚だという原田 俊樹(ハラダ トシキ)さんが店長を務めていて、開店前まで私たちの練習や溜まり場として場所を提供してくれている。
みんな、原田さんと仲良しで、ある意味原田さんも仲間みたいなものだ。
だけれど、なぜか今日は愁生さんがまだ来ない。
「愁生さん、遅いね」
「そうだな、大学でダチにでも捕まってるんじゃないか?」
私の問いかけに答えてくれたのは優兄だった。
「でも遅くなるときは、だいたい連絡来るのに…。今日は個人練習かなぁ」
念入りに磨いていたベースを抱え直し、ベンベンと弦を爪弾く。
私はボーカル兼ベースを務めている。
少し変わった編成なのは、私のわがままだ。
このベースは、亡くなった私の親友かつ相棒だったアキちゃんの遺品だ。
去年、アキちゃんのお母さんに柚ってもらった。