Lost voice Ⅱ‐キミ ノ オト‐
空が、たくさんの雫を落とすのは泣いているからだ。
けれど、ずっと泣き続ける空などない。
そして私たちも。
辛くて悲しくて、涙を流してもいつかは、光がさす。
雨上がりの青空は一段とキレイで、だからこそ私は雨が嫌いじゃない。
涙を流したあとの笑顔は、とても眩しいのだから…―――
アスファルトを冷たく叩いていた雨音は、いつの間にか消えていた。
鉛の雲の隙間から、青い青い空が顔を覗かせる。
「…あ。雨、止んだ」
空を見上げた私の名前を、待ちわびた彼が優しく呼んだ。
「柚、お待たせ」
濡れた傘を畳みながら、彼は日だまりの中で柔らかく微笑んだ。
チョコレート色の髪が、甘く輝く。
「…暁くん。」
私も自然と微笑み返して、大好きな彼の隣に並ぶ。
今私は、雨上がりの日だまりの中にいるのだ。
「…あ、見て。虹だぁ」
「ホントだね」
どちらともなく絡めた指。
青空にかかる、大きな7色の虹を二人で見上げ、一緒に笑いあった。