Lost voice Ⅱ‐キミ ノ オト‐
♪ もうひとつの雨と私
ようやく梅雨も明け、暑くなる日が増えてきた。
季節はそろそろ夏にさしかかる。
私、此花 柚姫(コノハナ ユズキ)も、ようやく大学という環境に慣れてきた頃だ。
見事に第一志望の大学に現役合格を果たし、キャンパスライフをそれなりに満喫していた。
もちろん、歌を取り戻して新たに加入したバンド、rainのボーカリストとしても日々奮闘している。
ちなみに親友である泉堂 優輝(センドウ ユキ)も同じ大学、学部だ。
そんな私たちは今、大学構内のテラスで昼食を取っていた。
「柚、この前のライブ、めっっっっちゃ良かったよ!」
めっちゃ、をとても強調して鼻息荒く話す優輝に、私はありがとうと満面の笑みを返した。
優輝は、私が高校の時に仲良くなり、以来ずっと私を側で支えてくれた大切な友人だ。
声を無くした私を理解してくれ、元気をくれた。
声を取り戻したときは、自分のことのように涙を流して喜んでくれた。
そして今は、rainの柚の、一番のファンだという。
ライブは、回数こそ少ないが毎回来てくれる。