Lost voice Ⅱ‐キミ ノ オト‐
「おいおい優輔、柚ちゃんを泣かせんなよ。」
そんな優兄にチョップをかました、落ち着いた雰囲気の大人っぽいこの人が佐倉 愁生(サクラ シュウセイ)さん。
rainのまとめ役であり、担当はギター。
「愁生さんっ、聞いてください!優兄が、私が取っておいた卵焼き食べちゃったんですよ!」
「あーあ、食べ物の恨みは恐ろしいんだぞ?」
と言いつつ、優兄の頭を小突く。
「仕方ねぇだろ!月末で金がねぇんだよ!」
どうやら、お昼を抜いたらしい。
そう聞くとちょっぴり可哀想になる。
「なぁ、愁生。後生だ、飯を恵んでくれー」
拝み倒す優兄に、愁生さんは困った顔をして肩をすくませて見せた。
NO、のサインらしい。
月末が厳しいのはみんな一緒だ。
「午後は死んだな…」
がっくり肩を落とす優兄。
仕方ないなぁ…。
「優兄、あの…。お腹の足しになるかわかんないけど」
そう言いつつ、私が差し出したものを見て優兄は目を輝かせた。
「まじで!?」
おやつとして作ってきたクッキーだった。
「少し多く作りすぎちゃったし、良かったらどうぞ。愁生さんも良ければ。」