Lost voice Ⅱ‐キミ ノ オト‐





「まじで?ありがとう、いただきます」





にっこり落ち着いてお礼を言ってくれた愁生さんに対し、優兄は




「柚ーーっ!ありがとう!!一生お前に尽くすぜ!愛してる!!!」






そう叫ぶや否や、ガバッと抱きついてきたのである。






「えっ?は?ちょ…!?」





驚きすぎて、意味をなさない言葉ばかりが出る。





ていうか愛してるって、たかがクッキーで大袈裟な!





そんな時だった。






「…ぐぇっ」





踏まれたカエルのような声を出し、優兄が突然離れた。






「ひぃっ!」






かと思うと悲鳴をあげる。






何事かと顔をあげた途端、思わず私まで悲鳴を上げそうになった。







「…やぁ、優輔。」







そこには、般若の如く恐ろしい顔で優兄の首根っこを掴み微笑む、暁くんの姿が…。





怒りの標的でないにしろ、あまりの恐ろしさに私まで固まってしまう。






愁生さんは知らんぷりを決め込み、青い顔でさりげなく目をそらして、距離を取っていた。





優輝ちゃんだけが、面白そうにニヤつきながら状況を見守っている。







「ご、ご機嫌麗しゅう、アキ…」






焦りのためか、優兄の返事がおかしい。





優兄、間違いなく地雷踏んだよそれ。








< 7 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop