Lost voice Ⅱ‐キミ ノ オト‐
「まじで?ありがとう、いただきます」
にっこり落ち着いてお礼を言ってくれた愁生さんに対し、優兄は
「柚ーーっ!ありがとう!!一生お前に尽くすぜ!愛してる!!!」
そう叫ぶや否や、ガバッと抱きついてきたのである。
「えっ?は?ちょ…!?」
驚きすぎて、意味をなさない言葉ばかりが出る。
ていうか愛してるって、たかがクッキーで大袈裟な!
そんな時だった。
「…ぐぇっ」
踏まれたカエルのような声を出し、優兄が突然離れた。
「ひぃっ!」
かと思うと悲鳴をあげる。
何事かと顔をあげた途端、思わず私まで悲鳴を上げそうになった。
「…やぁ、優輔。」
そこには、般若の如く恐ろしい顔で優兄の首根っこを掴み微笑む、暁くんの姿が…。
怒りの標的でないにしろ、あまりの恐ろしさに私まで固まってしまう。
愁生さんは知らんぷりを決め込み、青い顔でさりげなく目をそらして、距離を取っていた。
優輝ちゃんだけが、面白そうにニヤつきながら状況を見守っている。
「ご、ご機嫌麗しゅう、アキ…」
焦りのためか、優兄の返事がおかしい。
優兄、間違いなく地雷踏んだよそれ。