Lost voice Ⅱ‐キミ ノ オト‐




むっすー、と不機嫌全開な顔で頬杖をついていた。





明らかに拗ねたその横顔が、可愛いやら面白いやらで。





「…柚?」




突然笑い出した私に、暁くんは怪訝そうに眉をひそめた。








「ふふ、ごめんね、暁くん。」







押さえきれずに、暁くんのチョコレート色の柔らかい髪をくしゃくしゃと撫でてみると、不機嫌そうにしつつも、少し機嫌が直ったようだった。






暁くんの耳がほんのり赤かったのは、私の胸のうちに留めておくことにした。









彼が、桐野 暁(キリノ アキラ)くん。





Rainを結成し、彼はギターを務めている。




アマチュアとは思えないほどの巧みなピックさばき、正確かつ鮮やかな音色は、まさに天才と言うべきだ。





それだけでなく、四分の一イギリスの血が流れるクォーターであり、かなりの美形だ。





優しいチョコレート色の髪はいつもほどよく丁寧にセットされ、薄く形のよい唇からは思わずとろんとしてしまうような甘いいい声が紡がれる。




スッと鼻筋の通った鼻は高く、二重の目は長いまつげで縁取られ、のぞく瞳は幻想的なヴァイオレットだ。




おまけに性格は優しく(例外有り)紳士的で、スポーツ万能、成績も優秀で…と、何から何まで完璧な人物である。





そんな彼は、私の“彼氏”でもある。








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