時を越え、君を知る。


「すみませ…っ、」
「いい。泣きたいなら泣け。」


長門さんがわたしを艦砲の裏へ引っ張った。


「ここなら視線を気にする必要もない。」
「っう、ぅ…、」
「…何をそんなに思い悩む。」
「だっ…て、わたし達は…っ、あんなに、平和な時代をっ…生きていられるのに、みなさんは…、国のために、戦って、死と、隣り合わせに…なってるじゃないですかぁ…っ! みんな、幸せになる、権利、あるはずなのに…!」


国のためにと戦う命は、散ってしまう。
それなのに、わたし達は平和な時代を、なんの疑問も抱かずに生きている。


「……。俺は今でも十分幸せだ。他の者がどうかは分からんが。」
「…っ、どうして、?」
「こうやってお前が、この時代の者のために泣いてくれている。俺達を想ってくれているだろう。」


手を引っ張られ、引き寄せられる。


「皆、守りたいものがある。そのために戦っているんだ。」
「…長門、さんも、守りたいもの、ありますか…?」
「ある。俺達が戦い抜けば、須藤や国民が平和に生きていける未来が存在しているんだろう? 俺はその未来を守りたい。」


真っ直ぐな瞳が向けられる。
視線を絡め取られて、目を反らせずにいると、長門さんの手が頬へと伸びてきた。

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