時を越え、君を知る。
「これを、お前に持っていてほしい。」
手渡されたのは、お守りだった。
袋には何も書いていない、真っ白なもの。
紐が付いていて、首からぶら下げられるようになっている。
「これは…、」
「戦艦(おれたち)は皆持っているお守りだ。」
「そんな大切なもの、受け取れません…!」
「持っていてほしいんだ。」
そう言うと、わたしの首にそれをかけた。
胸元でお守りが揺れる。
「…須藤が未来に無事帰られるよう、願っている。」
「ありがとう、ございます。」
「いつか未来に帰っても、この時代を忘れないでくれ。霧島のことも陸奥のことも、俺のことも。…俺達が生きていたことを、覚えていてほしい。」
視線を合わさずに、長門さんが言う。
「当たり前です! 長門さんも忘れないでくださいね、わたしのこと。」
「ああ。もちろんだ。」
これは夢なのかもしれないと思ったこともあった。
夢であればいいと思った。
けれど、この時代はわたしにたくさんのことを教えてくれた。
忘れかけていたもの。生きるということ。
決して平和な時代ではないけれど、みんな、生きているんだ。
生まれた時代で精一杯生きている。