restart * another sky *からのサイドストーリー
匂い立つ、花
「撤収しますか?」
「麻友理さん――??」
正直、私の頭の中は、航太、航太、――。
いっぱい、いっぱい過ぎて、翔平君の声なんて、全然頭に入ってこない…。
「…聞いてますか?」
「えっ??」
ビクンと、弾けるように反応した私に、驚いた眼差しが突き刺さる。
だって、突然だったんだもん。
わかってたよ?航太が来ることくらい。
玲と顔を会わすことくらい、わかってたこと。
だけど、やっぱり…それは微妙で…。
私なんてもう、関係ないはずなのに、二人が顔を会わせると聞いただけでこの動揺っぷり。
未だに航太を忘れられない自分が情けなくて。
もう、玲は新しい恋に進んでいるのに。
もう、結婚も控えているのに。
航太に会ったら、――――。
また二人がよりを戻すんじゃないのか、とか、航太は今も玲が好きなんだろうな、とか…。
ぐちゃぐちゃの思考回路に、胃がチクチクと痛みだす。
「OKなら納品書、提出して帰ろうか。」
私は二人に視線を合わさないように、片付けを始めた。
成長出来てないのは、私だけだ、――――。
「撤収―っ。」
翔平君の元気な声を合図に、車に向う。
「腹、減った!!」
若い男子二人の声に、朝ごはん、食べて帰ろうか、なんて。
私たちは式場を後にし、遅めの朝食をとるために、ファミレスへと車を停めた。