【BL】――、呼ぶ声がした。
アイツを拾ったのは一年前だ。
特別アイツが良かった訳じゃなく、ただ単に利害が一致したから拾っただけ。
アイツは俺の穴を埋め、俺はアイツの穴を埋める。
満たされない心を互いに埋めるだけの存在。
行為に愛など存在しない。
そう、言うなれば単なる傷の舐め合いだ。
けれど俺達は、これを愛と決めた。
それで良かった。
気持ちなど存在しなくても。
だから互いのことには干渉しなかった。
俺がアイツについて知っていることは、千景(チカゲ)という名だけ。
それは千景も同じだった。
はずなのに……
アイツは最近やたらと話を聞きたがる。
余りにもしつこいから、一度だけ俺の話をしてやった。
何の仕事をしているのかという、くだらない話。
けどアイツは熱心に話を聞いていて、俺を見る眼差しが優しくて……俺は戸惑った。