ラブバトル・トリプルトラブル
 それでもまだ、美紀に気持ちを伝えようと息巻いていた。


何故好きになったのか解らない。

突然目覚めた恋に戸惑いながら、直樹に打ち明けた。
まさか……
直樹と秀樹がライバルになるなどと予想もしていなかったのだ。


それでも、クリスマスに長尾家に招待されたことが強みになっていた。

正樹に美紀を任されたと思ったからだった。


三人はそれぞれで悩み、そして運命のバレンタインデーを待つことになったのだった。




 三人三様の恋愛バトル。

それを歯痒く見ていたクラスメイト達。


そしてやっと……
高校野球で大活躍した彼等に応援団も立ち上がった。
でもそれは、美紀が誰を選ぶかと言う賭けだった。


「俺は大に賭ける。何故なら、アイツは先生になると言ったからだ。やはり、将来性があるのは大だと思うんだ」


「私は直樹さんが良いと思う。真面目だもん。それが一番よ」


「私はカッコイい秀樹さんが良いわ」

それは、クラス全体。
いや、学校全体を巻き込んだ騒動に発展して行ったのだった。




 やっぱり駄目かと、俯く秀樹と直樹。
大も真似をした。

三人に冷たい風が吹く。
クラスメートはそう思ったようだった。

みんなが見守るなか、トリプルラブバトルはそれで収縮するかと思われた。

それでもまだあがき苦しむ二人がいた。

美紀が本当は正樹が好きなことは分かっていた。

それでも納得出来るはずがなかった。
もし正樹と結婚したら、同じ誕生日の美紀が自分達の母親になってしまうのだ。

妹を母と呼ばなければならなくなるのだ。

絶対にそれだけは避けたかった。


何故……
自分達では駄目なのか?

兄弟は兄弟で、それぞれに思いを巡らす。


でも結局解るはずがない。


だって美紀自身さえも、気付いてもいないことだったのだから。


沙耶の言葉がなかったら、きっと一生美紀は苦しむはずだった。

でもだからって、今が苦しくない訳がない。
知ってしまった以上……

美紀はきっともっと苦しむはずなのだから。


< 105 / 228 >

この作品をシェア

pagetop