ラブバトル・トリプルトラブル
 子供達が学校へ行っている時間。

正樹と沙耶はルーフバルコニーにいた。

少し高台にある長尾家。
長閑な田舎の風景が眼下に広がる。


「花火大会の時には気付かなかったけど、此処って凄く気持ちいいのね」

空気を感じるために沙耶は深呼吸をする。


「姉が此処を買いたくなった理由が解るわ。私悪いこと言っちゃったかな?」

沙耶はそう言いながらもう一度両手を大きく広げた。

「コレなのよね。この雰囲気をみんなで楽しみたかったのね。私解ってやれずにキツいことばかり言っていたわ」

沙耶はうっすら涙ぐんでいた。

今日の沙耶は何時に増しておしゃべりだった。
沙耶は久しぶりの正樹ののツーショットに舞い上がっていたのだ。




 「ところでお義兄さん、おりいっての相談って?」


(良かった……)

正樹は素直にそう思った。

沙耶が切り出してくれたお陰で、正樹はやっと本題に入ることが出来る。

(でもどうやって話出せば……)

正樹は少し躊躇しながら、それでもやっと話出した。


「以前勧めてくれたお見合いだけど……」

正樹は恐る恐る沙耶を見ていた。


「えっ、お見合い!?」

沙耶は目を丸くして、正樹を見た。


「だからそなの、もう一度考え直そうかと……」


「何考えてるの!?」
沙耶は正樹に詰め寄った。


「美紀ちゃんはどうなるの!? あんなにお義兄さんのことが好きなのに!」




 沙耶の剣幕に正樹はたじたじになった。


「解っているの!? お義兄さんは三人の女性から愛されているのよ!」


「三人!?」


「そう三人。何故美紀ちゃんが子供の頃から『パパのお嫁さんになる』って言っていたか解る? 結城智恵さんが言わせていたの」


「えっ!!」
正樹も目を丸くした。


「好きだったのよ! お義兄さんのことが。大好きだったのよ!」
沙耶はとうとう泣き出した。

自分でも解らない感情が沙耶を支配していた。


(三人か……)

沙耶は俯いた。
本当は三人ではないことに気付いて……


「そんな!? 俺は結城智恵が好きだった。守ってやりたかった。でも珠希に出会い俺は変わった。素直になれた。守って貰いたくなった」

でも、聞き捨てならないことを言い出した正樹を又見つめる羽目になった。




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