ラブバトル・トリプルトラブル
兄弟の通っている高校は、県内では名が通ったスポーツ校だった。
秀樹と直樹は野球部に所属していた。
美紀はソフトテニス部。
国体選手だった母の珠希に憧れて選んだ道だった。
五年前亡くなった珠希は中学で体育教師をしていた。
プロレスラーの正樹のサポートしながら、ソフトテニスの顧問もこなす。スーパーレディだった。
珠希が実の母でないことは知っていた。
だから時々、自分には才能が無いと落ち込む。
でもそこは、珠希の背中を見て育った美紀。
何事にも負けない根性だけは備わっていた。
フェンスの向こうに秀樹が見える。
秀樹はグランドでウォーミングアップをしていた。
秀樹は豪速球を売り物にしていた。
勿論捕球は直樹の担当だった。
『基本はキャッチボールと遠投』
そう新コーチに言われた。
(その位解ってる)
秀樹は思う。
でも……
早く変化球を覚えたくて仕方ない。
昨日イヤイヤ、言われた通りキャッチボールをした。
『ストレートもまともに投げられない奴に、変化球が投げられる訳がない!』
投げやりな秀樹の態度を見たコーチに、そう指摘されてしまったのだ。
(もうー!! 解ってる! 解ってる! 解ってるよ!!)
秀樹はヤケになっていた。
だからついムキになって、カーブを直樹に向かって投げた。
でもそれはすっぽ抜けた。
慌てて直樹がボールを拾った。
「兄貴どうした?」
直樹が心配して、マウンドに駆け付けた。
「いや、何でもない……」
そう、言おうとした。
「もしかして、カーブだった?」
でも、直樹の指摘に言葉を失った。
「カーブは投げ方を誤ると肘や肩に大きな負担がかかるって言われたろう?」
「うん。俺の場合、手首をひねって親指が上に来るから危険なんだって」
「――ったく、しょうがねぇな。解ってて遣るから始末悪いよ」
直樹の言葉に秀樹はグーの音も出なかった。
「コーチが言っていたよ。外に向かって曲がるボールだから、その方向に手首をひねってしまうって。ストレートと同じでいいのにって」
「えっストレートと……」
「だから、まずはストレートなんだって」
「基本か?」
直樹は頷いた。
「トップの位置で手首を内側にロックして、親指が下に向くようにリリースすれば、負担はかなり軽減されるって」
秀樹と直樹は野球部に所属していた。
美紀はソフトテニス部。
国体選手だった母の珠希に憧れて選んだ道だった。
五年前亡くなった珠希は中学で体育教師をしていた。
プロレスラーの正樹のサポートしながら、ソフトテニスの顧問もこなす。スーパーレディだった。
珠希が実の母でないことは知っていた。
だから時々、自分には才能が無いと落ち込む。
でもそこは、珠希の背中を見て育った美紀。
何事にも負けない根性だけは備わっていた。
フェンスの向こうに秀樹が見える。
秀樹はグランドでウォーミングアップをしていた。
秀樹は豪速球を売り物にしていた。
勿論捕球は直樹の担当だった。
『基本はキャッチボールと遠投』
そう新コーチに言われた。
(その位解ってる)
秀樹は思う。
でも……
早く変化球を覚えたくて仕方ない。
昨日イヤイヤ、言われた通りキャッチボールをした。
『ストレートもまともに投げられない奴に、変化球が投げられる訳がない!』
投げやりな秀樹の態度を見たコーチに、そう指摘されてしまったのだ。
(もうー!! 解ってる! 解ってる! 解ってるよ!!)
秀樹はヤケになっていた。
だからついムキになって、カーブを直樹に向かって投げた。
でもそれはすっぽ抜けた。
慌てて直樹がボールを拾った。
「兄貴どうした?」
直樹が心配して、マウンドに駆け付けた。
「いや、何でもない……」
そう、言おうとした。
「もしかして、カーブだった?」
でも、直樹の指摘に言葉を失った。
「カーブは投げ方を誤ると肘や肩に大きな負担がかかるって言われたろう?」
「うん。俺の場合、手首をひねって親指が上に来るから危険なんだって」
「――ったく、しょうがねぇな。解ってて遣るから始末悪いよ」
直樹の言葉に秀樹はグーの音も出なかった。
「コーチが言っていたよ。外に向かって曲がるボールだから、その方向に手首をひねってしまうって。ストレートと同じでいいのにって」
「えっストレートと……」
「だから、まずはストレートなんだって」
「基本か?」
直樹は頷いた。
「トップの位置で手首を内側にロックして、親指が下に向くようにリリースすれば、負担はかなり軽減されるって」